シャトー・ソシアンドマレ　2018年　
赤 仏ボルドーメドック　50周年記念ボトル
メルロー66％、カベルネソーヴィニオン30％、
カベルネフラン4％
通常価格(税込)8580　当店価格(税込)7040

「反骨と継承」

エレガントなワインです。妙齢の貴婦人のよう。濃い美しいルビー。薔薇や森の赤いベリーにブルーベリーも、微かにミント、胡椒、水のマイナスイオンのニュアンス。華麗にして気品があり、エキゾティックな陰もある、ジュモーのビスクドールのよう。今飲んでも美味しいのですが、時を加え、さらなる熟成が期待されます。
「シャトー・ソシアンドマレ」は無冠の帝王とか玄人のシャトーラフィットとか言われている超コスパボルドー。質的にはすでにボルドー格付けの2級や3級に相当するだろうと専門家からは目されていて、薀蓄漫画「ソムリエール」では90年のヴィンテージ同士で、「シャトームートンより美味しい」と登場人物に言わせています。ブルジョアクリュですらないのに、とんでもない実力、それがこの価格で買えるのは嬉しすぎますね。
加えて今回ご紹介する2018年は亡きジャン・ゴートローの最終ヴィンテージにして創立50周年記念の特別限定ボトルであり、葡萄の当たり年でもあります。
非常に象徴的なこのボトルの物語はずばり「反骨と継承」です。
　
シャトーの営業支配人であるパスカル･ティールさんによれば、ソシアンドマレは1960年代には、この地のブルジョアクリュ（当時はシンジケート的な性格）として認められていました。ジャン･ゴートロー氏がこの畑を購入したのはその頃の事です。時代が下り2003年にボルドー当局が、ナポレオン三世による1855年に行われた、相当やっつけ仕事だったメドック格付けから漏れていたり、当時はまだ存在しなかったシャトーなどを、公的に格付けをする決定をしました。
ところがその際、ソシアンドマレを率いるジャン･ゴートロー氏は格付けへの参加を拒否し、それまでのブルジョアクリュのタイトルをも、あえて返上したと言うのです。肩書きなど関係なく、わが道を行くという決意で「ソシアンドマレは上級格付でもブルジョアでもない、ソシアンドマレである」と彼はその気持ちを表明しました。すでにその実力に対する評価はフランス国内に留まらず、日本からも強い支持を得て販路が開けており、ワインのプロからは圧倒的な支持を受けていたのです。その意味で日本にはとても感謝しており、パスカルさんもコロナ前には毎年日本を訪れていたし、次回の訪問で皆さんに会えるのを楽しみにしているという事です。

　一昨年、私は写真家としてミラノでミッソーニブランドと展示のコラボレーションをしたのですが、「ミッソーニ」創始者であるヴィットリオ・ミッソーニさんは元陸上競技者で、しかもオリンピアンでした。この「シャトー・ソシアンドマレ」の実質的な創業者であるジャン・ゴートローさんもスキーのアスリートだったそう。後に発揮される権威におもねらない反骨精神は、そんな基盤があったのでしょうね。晩年の写真で見ると実に優しそうなお爺さんですけど。
彼はネゴシアンをするうちにジロンドの大きな流れの河口近く、ここらは海のようで貨物船が行きかうのが見える、のほとりにソシアンドマレの畑がほとんど放置されているのを見出します。1969年の事、オー・メドック地方の中ではボルドーの街から最も遠く、当時、畑は荒廃していましたが、すばらしいテロワールであり、景観もよく、ジャン氏は一目惚れだったと言います。水はけがよく、霜害も無い良い風のある理想的な地形、しかも安かったので、彼は自らそのシャトーを買取り、葡萄農家となってシャトー運営に入ります。ここから「シャトー・ソシアンドマレ」の輝かしい歴史が始まりました。

ジャンさんには一人娘のシルヴィさんがおり、この地を深く愛する彼女は父親の後を継いで行きます。2015年からセカンドの醸造を受け持ち「ソシアンドマレ」にも関わりました。父のジャン氏は2019年に亡くなりましたが、彼が何らかの形で醸造に関わったのが2018年収穫が最後だったのでしょう。この年を50周年記念とし、そのボトルだけ通常とは異なる黒い色のエチケットにしています。実にシックな美しいラベルです。金の文字で「シャトー・ソシアンドマレ」、その下に、この年は「シルヴィとジャン・ゴートロー」と親子の名前が書かれています。翌年からはシルヴィの名前だけになります。二人の最後の合作なのですね。

という事でずばり「反骨精神と継承」、それがこのボトルに込められたメッセージです。
　ご贈答用に、またちょっとした節目の自分へのご褒美に、是非お求め下さい。
今後値上がりが予想されますので、お早めに。