レ・クーポレ・ディ・トリノーロ 2019<純粋と狂気の遺産>

レ・ク-ポレ・ディ・トリノーロ 2019年 
テヌータ・ディ・トリノーロ社
赤 地域イタリア・トスカーナ 
葡萄品種 カベルネ・フラン、メルロー、
カベルネソーヴィニオン、他 750ml
通常価格(税込)6380  当店価格(税込)5060

「純粋と狂気の遺産」

満ち足りた人生とは・・・。しかし天賦の才能を授かった人間は、自己実現の道を尋常ではない情熱を持って突き進まずには止まないものなのでしょう。
テヌータ・ディ・トリノーロの当主であるアンドレア・フランケッティ氏はロスチャイルド家の流れを汲む名門の出で、一生働く必要が無く遊んで暮せるという富豪の家系でした。何を思ったか、1980年代にトスカーナ南部、山を越えればウンブリア州というサルテアーノという人知れぬ荒野を訪れ、「古きトスカーナの原風景」に魅せられたと言うのです。トスカーナの原風景と言っても、糸杉が丘のなぞえに並木を作るような美しいものではない、若い日の彼が、かの地に佇んでいる写真が残っていますが、本当に草木も生えない地の果てのような荒野なのです。何故か彼はその地に魅入られ、そこにずっと居るための口実としてワイン造りを始めたと言うのです。何か普通では無いですね。
それからボルドーの名人達に教えを乞い、彼は殆ど独学で葡萄の栽培とワイン醸造を始めます。ファーストヴィンテージは1997年。このボルドータイプのワインは卓越したクォリティーで、彼はたちまち成功を収めてしまいます。続いて地葡萄の復活・発展を目指し2000年にはシチリア島エトナ山の斜面に「パッソ・ピッシャーロ」を、2008年には「コントラーデ・デッル・エトナ」を(エトナ山は確か哲学者のエンペドクレスが火口に投身して片方のサンダルが飛んで出たと)、近年にはシエナ南端にピノノワールの「サンカバ」を設立、いつしかイタリアワイン界を代表するカリスマ的存在となってしまいました。

こうして彼は人達からカリスマとか鬼才と言われるようになりましたが、しかしその仕事ぶりは狂気の沙汰と揶揄されました。イタリアではありえないほどの密植を行い、小さなセクションや一本一本の樹の成熟度合いに従って、30~40回もの収穫を行うなど、コスパ無視の異常なまでの拘りぶりが人達を呆れさせました。

この「レ・ク-ポレ・ディ・トリノーロ」はフラッグシップの「テヌータ・ディ・トリノーロ」のセカンドという位置づけですが、畑も作業も全く同じ、異なるのは若干の選果と新樽の使用率だけなので、イタリアワインの権威である本間チョースケ氏は「このワインを飲んで一度として失望を味わった事がない。この価格帯では疑いようもなく最高のワインの一つで、セカンドワインの領域を軽々と超越している」と言っています。それもそのはず、フランケッティ氏自身が来日の折に「レ・ク-ポレ・ディ・トリノーロは実は赤字なのです」と打ち明けています。
黒に近い濃いガーネットがかったルージュ。赤黒いフルーツのコンポートや花のニュアンス。バニラ等の複雑で豊かな香り。圧倒的な果実味。タンニンは柔らかく調和し長い余韻。ワイン会に同席した浦和のルロワとなぞらえる女性は、香り酔いしそうなほど、と言っておりました。時間が経っても少しも変わらないのもすごいポテンシャルです。主にカベルネフランとメルロー、カベルネソーヴィニヨンとプチヴェルド少々。その割合はヴィンテージによって変わります。

ところで「レ・ク-ポレ・ディ・トリノーロ」の「クーポレ」は丸屋根という意味ですが、それはフランケッティさんの畑の自宅玄関上に据え付けた半球状の丸屋根の事です。しかし、その写真を見た時、私はとても違和感を覚えました。無骨な廃墟のような石造りの古びた建物と、寂しく荒れはてたエクステンションの中に、どピンクの丸屋根だけが場違いに存在を主張しています。その色はボトルのエチケットと同じ濃いピンクなのです。因みにエチケットの白鳥は、一族の紋章からコンバートしたそうです。
気になって調べた所、この建物はかつて城塞化されていた古代の建造物を、彼がリノベートして住居としたらしい、するとますます丸屋根は場違いで、浮いており、変な感じです。言葉を変えれば、その部分だけが生き生きとしていて滅びの気配からは隔絶しているように感じられます。私は荒野に佇んだ若き日の彼の写真を思い出しました。ユング心理学的に解釈すれば丸屋根は自己の象徴なのでしょうか。「レ・ク-ポレ・ディ・トリノーロ」はその丸屋根の名を冠し、エチケットには丸屋根と同じ色をフィーチャーし、その色の中に血脈の歴史を示す白鳥が表現されているのですから、このボトルはある意味、彼の分身のようなものかも知れません。であれば赤字になろうとこのボトルの醸造は簡単には止められない訳ですね。
彼について書かれたものから分かったのは、彼は直観的な人間だと目されており、しかし同時に詩人でもある、つまりかなり内向的で知的な人のようです。単なる狂気の沙汰の人ではなく、経済効率とは自由な関係でいられた「純粋な自己実現の人」だったのですね。彼のワイナリー日記を読むと、それは詩的な文章で、ヘミングウエイばりの自然描写には心を揺さぶられ、すぐに彼の事が好きになりました。

ではなぜこのボトルが「遺産」なのでしょうか。実はフランケッティさんは2021年の暮れに亡くなったのでした。このワインが彼自身の投影であり生き様だとすれば今後、このままの継承は難しいのではないでしょうか。
高名なワイン評論家のジャンシス・ロビンソン女史が彼の死に際して次のような記事を書いています。
「私が心より愛してやまないアンドレア・フランケッティがローマの実家で亡くなった。日曜日の夜、短くない闘病の後で。72歳だった。・・・彼は楽しい位にエキセントリックだった。ワイン業界には色の濃いキャラクターが多くいるけれど、彼ほど底知れない人間はいない。と言っても激情的なタイプではなく彼自身は静かな男で、愛すべき率直さを持ち、いつでも何かを深く考えていた。この男性について言えば、全てについて普通では無かった。この世からの早すぎた退場も例外ではない。」彼女はフランケッティ氏がハンサムで、デザイナーのイヴサンローランにクリソツだと書いています(そう言えば彼は若い時に映画俳優もしていた)。
フランケッティ氏が醸造にかかわったのはぎりぎり2020年の収穫まででしょう。2019年はすでに在庫が払底しつつあり、今後値上がりが予想されます。お早目に!

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